「空中マンション」
大きな神殿だけでは物足りず
バビロンで王妃は故郷の森を懐かしむ
ここは日当りが悪く洗濯物も乾かない
いつだって声は神にはとどかないで
隣にとどいてしまうのです
駐車場からマンションを見上げると
不思議でもない不思議が浮かんでいる
多すぎるドアの奥に同じような玄関がやっぱりあること
そんなこと
車の下にはふくよかな猫達が共同生活を営んでいて
一番の顔なじみになった虎模様は時折じっと見つめてくるので
こちらも無言で見つめてやるのです
30年前に刑事ドラマで使われた螺旋階段も
神代に行われた身投げも
神話となっては話ばかりで
本当にあったのかなんてわかるわけないけれど
そんな話が王妃の心を慰めることに
王も家来も気がつかないで忙しそう
せっかくの狭い庭の草は伸びっぱなしで
暇なわけでもないけれど申し訳なくて
夜鳴きの猫がうらめしく思うのです
子供たちが階段を駆け上がり
屋上からどこかの花火を見ようとする
どの子がどのドアから飛び出したのか知らないけれど
ここもまんざら悪くない
夜に泣くのは猫だか赤ん坊だか
どっちがどっちかわからない不思議
今夜携帯電話でその話をしよう
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