3月13日の詩屑結び 「心の奥まで 風 」
「心の奥まで 風 」
しずかにひろがっていく
土の中
木々の中
のびあがる光の中
出逢う
気になりだすと
ドラムのように鳴り響く
新月の夜、雨の夜。
大雪で折れたままの椿が咲いてる。
窓の端の蜘蛛の巣の主は
どこへ行った
今朝から明日を思う
この天気が
続いて欲しいような
返ってほしいような
朝の気分は
昼に忙殺されて
夜を迎える
初めての明日を
やっと楽しめそうだ
のびあがる朝の私の背の骨の
羽があったはずの
空
「この土日なにしょっかな~」
やりたいことを
紙に書き出す
今が楽しい
偶然
見つけた花を
あの子に送ろう
今日見つけた花だよ
とだけ小さな画面に打ちこんで
待ってみる
すぐに既読でない方がいい
ポケットに放り込んであたためる
痛み
共に優しさ
こわばる身体を突き放し
わざわざ雑な料理を作る
花を一片
枯れてゆくものから順に
一つ一つ
鋏で切り落とした
花は故郷の色を移す
空を見上げ
風にゆだね
ゆらり
桜が降った
気づいた頃には
世界は幸せな色をしていた
桜は故郷の色
切なく声が遠く響いて
穏やかな風
私の花の根の先
しずかにひろがってのびて
香る花が好きだ
ヒヤシンスの水栽培を眺めて
少しずつ春に向かう時を感じるのが好き
そしてようやく、
ヒヤシンスが咲き始めた
「待ってたよ」
何度も鼻を近づけて
切ない春に包まれる
何度もたしかめる
優しさ そして痛み
「鞄 買ってもらいました」
大切なものがふえていく
鞄に入りきらないほどの
うれしい記憶
教えてあげない
気づいていても
ちょっとしたコツは手順の通りに
おいしいお茶を淹れよう
一緒に過ごすひとときに欠かせない
大切な一杯を
楽しみなお菓子のためにも
おなかぺこぺこの時に美味しいものを食べる
すごく眠い時にふかふかの布団で寝る
心の奥が満たされる
ほったらかしの小さな画面
音がした気がするけれど
今は気づかないふり
風が ほほをなでる ような 歌をきいて
風が こころをなでる ような 言葉にふれる
つよくなろうと なにかにこたえようと
きつく ぎゅっと むすんできたものが
ほろりと ほどかれ
なみだがちょっとだけ こぼれる
雨上がりの朝
みんなに会うまえ見つけた ちいさなしずく
新芽のうえにまぁるくとどまった だれかのしずく
それらをおもって またちょっとだけ わたしはないた
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