「81/3」


どうしてだろう

空も木々もあんなに映画なのに

可愛い女達は誰もが主人公なのに

私の中には何も浮かんでこない

アサ ニシ マサ

呪文は呪文のまま意味など要らない

ただあの声が響きがまだ耳の奥に残っている

奇術師でさえわからない私の映画の全貌を

私のほかに誰がわかるというのだろう


また昔の夢を見た

あのころの出来事が映画でないなら

私はどこに映画を探せばいいのだろう

都会の雑踏の中に

サーカス小屋の中に

空に海に

私は映画を探した

けれど探すまでもなくそれらは映画だった

カメラも監督の私も必要とされていなかった

私は何も創れない

考えているばかりで手は動かず

産む苦しさより産めない苦しさばかりがつのっていく

贅沢な悩みだということは私が一番よくわかっている

だが悩まなければ監督の私はいなくなってしまう

強迫観念というのだろうか

私にはわからないことに人はきりきり舞いしていて

それさえ私には映画なのに

人は映画を見ているのだろうか

人は私が見たような映画を

それぞれ見ているのだろうか


都会に移ってきた人々は映画だ

彼らの田舎の田畑の広がる風景は映画だ

煙を上げる工場は映画だ

人のいなくなった祖母の家は映画だ

流れる風景を見ながら電車に乗っている私は映画だ

祖母に名前を忘れられていたことは映画だ

だから私は涙を流してその場面に色を添えた

私には結末はなんとなく予測できるが

そんなものが見たいわけではなくて

また見せたいわけでもなく

ただ私は最後にみんなと手をつないで踊りたい

そしてそれは映画じゃないほうがいい

想作あれこれ

こちらは展示場です。 あれこれいろんなものを詰め込んでいます。 想うことを大切に作ります。 ー エガクカナ ー

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