「古代遺跡近所 紀元前駅」
駅前の橋を渡る
天は青
影は黒々と元気らしい
駅に群がる人の声が川の音と混じり合って流れている
橋の下では水面が
縞模様に輝いて揺れて
その上をひとりの影がゆっくり移動する
高い堤防の壁は日の光を浴びて
古代エジプトピラミッドの色をして
裾のほうは水模様をうけてきれいだ
今日こそ発見がある予感の考古学博士
目を凝らすとその壁には橋の影がくっきり掛かって
梯子みたいだ
川面から地上へ斜めに伸びかかる
ひとりの影が梯子を移動する
足を持たないファラオの動き
揺れ動くのやめて
くっきりと人の形で
黄金の壁を
エスカレーターの要領で登っていった
駅の求心力は神殿のそれよりすごいか?
あらゆる問いはほとんど蛇のような
ヒエログリフの残された壁の前で
行ったり来たりする人々の中で
ミイラみたいに忘れさられている
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