「地下のどこかに」
地下は都会の心臓の音がする
張り巡らされた地下のどこかにはきっとまだ
誰も足を踏み入れたことのない場所がある
地下は都会の心臓の音がする
張り巡らされた管から
いつまでもいつまでも鳴り続け
わたしの心臓はほんの少しあこがれ
シンクロナイズをこころみる
蛍光灯の灯はまばたきのように明滅する
行き場のない感情は硬質な信号に押し込め
押し込めてそれぞれの手の中で小さなグロテスク
相手を求めて叫んだり
ひそひそと暴れたりする
この音が止まるとき
それは都会が死ぬときだろうか
止まれば静かだろう
とても静かだろう
張り巡らされた地下の道の
どこかにはきっと
魔物が巣を作っていて
都会のはらわたを掻きむしっている
今日も駅にはまた新しいポスターが
こちらに笑いかけ
朝も昼も夜も同じ
光源が照らしてくれるけど
待人来らず
空に鳥の群れ
横切って孤独の影
まぎれてしまうよ
闇と人が心地よくて
だめになってしまうよきっと
そろそろ家へ帰ろう
帰れるのなら
(数年前のノートより)
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