(7月の本)「頼むから静かにしてくれ」レイモンド・カーヴァー
(7月 ステキだなと思う 本について)
書いた人:れい
本のタイトル:「頼むから静かにしてくれ」レイモンド・カーヴァー
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その物語において、死は劇的ではない。運命的な恋もなければ、犯人を追いかけることもない。
どこにでもありそうな出来事を、どこにでもありそうな言葉で語る。淡々と、丁寧に、実直な大工のように。
しかし私達はたいてい、退屈な真実よりも劇的な演出を見たがるものだ。古代の神話から、現代のインターネットまで。私達は息を吐くように演出し、編集し、伝達する。
私はその本を読む。森に囲まれた場所で、日差しを浴びながら。物語の背後に隠れている暗示を必死に読み取ろうとする。暗示は注意深い小動物のように、物陰に潜んでいる。私は目を凝らす。尻尾だけが見える。
突然、森の中から誰かの視線を感じる。私の根源を誰かが見つめている。淡々と、丁寧に。一体誰だ?全身から汗が吹き出す。
私は目を閉じる。私は視線の正体を知っている。でも名前が分からない。よく知っているはずだ!手を伸ばしても、記憶の表面に触れるだけだ。
鳥が甲高い声で鳴く。虫が這い回る足音がする。なぜこんなに音が大きいのだ?静かな場所に行きたい。そこで安らかに本を読みたい。私が求めていたのはただそれだけだったのに。
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